
同窓会と、居場所
2026年10月17日
ある日、高校の頃のグループラインにこんな通知が来た。
「学年全体の同窓会をやります!」
同窓会に参加する権利がある人間というのは、体育祭で全力を出していた陽キャ、合唱コンクールでちゃんと練習してた陽キャ、文化祭の準備をリードして出し物をより良くするために努めていた陽キャ、等の人々だろう。
私は1年生の文化祭ではクラスの出し物に逆張りして変な展示物を1人で作っていたし、2年の合唱コンクールは放課後の練習をサボってクラスのLINEグループから追い出されたりしてたし、高校最後の体育祭は出場したかった卓球の試合のメンバーから外されて出番がなくなり、駐輪場の裏で友達とデレステ(アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ)をしたりしていた。
決して同窓会に顔を出してはいけない類の人間だった。しかし、「こんなおもしろそうなイベントはねえ!!!!!!!!」仕事の多忙具合に精神を追い込まれてキ㊙️ガイゲージが最高潮に達していた私は参加表明をしてしまった。
そして同窓会当日の数日前、幹事から参加メンバーが共有された。ちらほら面識があるメンバーはいたが、私のことを覚えているか怪しい人が大半で、完全アウェーである。
そんなこんなで当日を迎え、アウェーな戦場に赴くことに抵抗感を感じながら、電車を乗り継ぎ会場の新宿へ向かった。
本当にアウェーだったため、会場に着いても知っている顔がいない。どうやって合流しようか迷いながら周辺をウロウロしていると、1人だけ知っている顔がいた。
1年生の頃同じクラスクラスだったSである。彼とは中学の部活が同じで、高校1年生の頃はよく話していたが、2年、3年になるうちに疎遠になってしまった。成人式で軽く挨拶したのが最後の記憶である。
しかし助かった。彼が一番まともに話せる人間だったため、彼について行って合流することにした。
とりあえずSの隣に着席。同窓会に来ていたのはだいたい30人くらい。6人席の卓が5つあり、男女が混じっている卓、男だけの卓、女性だけの卓の3種類に分かれた。もちろん私が着いたのは男だけの卓。女性が苦手な陰キャの生存戦略である。
全員の飲み物が揃ったのち、乾杯の音頭があり、いよいよ同窓会が始まった。最初は6人でそれぞれ今どんな職に就いているか、みたいな話をしていた。しかしほどなくして、なんとなく想像はしていたことではあるが、私とS以外の人は女性がいる卓に旅に出てしまった。
広めの6人席に2人、だけど他の席は身を寄せ合って男女が楽しそうに話している。本当に滑稽な光景である。2人でこんな光景を面白がりながら談笑して、6人用に配膳された食べ物を好き放題に貪った。3人分のワタリガニのクリームパスタは美味しかったが、複雑な味がした。
Sの話を聞くと、彼は大学を出て以来無職をしているらしい。堂々と「無職笑」と言う彼の目には、恥じらいを微塵も感じなかった。私も彼のように堂々と生きていきたい。彼も私と同様に、なんか面白いことないかなと思い同窓会に参加したらしい。思考回路とその行動の結果が私と全く同じである。
さすがに同窓会に来たのにSとTとしか話していないのはもったいないと思い、1年生の頃クラスが同じだった男と、その友人と思しき名前を知らない人が2人で話をしていたので、Sを連れて話かけに行ってみた。
こちらから挨拶をして話を振ってみたが、そっけなく返されて、2人はグラスを持って違う席にそそくさと移動してしまった。逃げられた。
女性に避けられるの慣れているが、男に避けられるとかなりくるものがある。思い返してみれば、最初に話をしていたS以外の男たちも、私とはちゃんと目を合わせて話してくれている感じがしなかった。
多分、この同窓会は私の「居場所」ではなかった。それはもちろん、私自身が「同窓会に参加する権利がある人間」ではない方の人間だからである。おそらく、普通の人生を送っていたら同窓会が居場所にならないということにはならないだろう。
自分が普通ではない(悪い意味で)ことは重々理解しているのだが、今は普通に正社員として社会人をしているためか、自分がちょっと普通なんじゃないかと思い始めてきた節がある。
大きな間違いである。普通の人間だったら私が置かれていたような状況には陥らない。それを再認識できたことが、今回の収穫かもしれない。
ただ、同窓会から隔離されたSとの2人きりの広いテーブルは、私の居場所だった。Sは無職ではあるが、私よりもいくらかまともな人間ではある。しかし、私と同じ状況に置かれるということは、彼もどちらかと言えば「同窓会に参加する権利がある人間」ではない方の人間である。そんな彼が偶然同窓会に来てくれたから、私は居場所を獲得した。偶然が、私の居場所を作ってくれた。
多分、一緒に仕事したり雑談に付き合ってくれる会社の人たち、たまに遊んでくれる前職の同期や友人たちとの「居場所」も、形は違えど、そういう偶然が作ってくれたものなのかもしれない。
今ある居場所をもっと大切にしよう、それが今回の同窓会で出た結論だった。それに気づけた今日は、ベスト・サタデイ・エバー、それではまた。
P.S.
トップの画像は、一次会の後Sと2人で食べに行ったラーメンです。ワタリガニのクリームパスタと同じく、複雑な味がしました。
